夫婦で語る 村上春樹エッセイ「CAN YOU SPEAK ENGLISH?」

こんにちは、千明です。
夫婦でよく本をシェアしています。そのなかで盛り上がったものについてあれこれと対話してみます。第一回は村上春樹さんのこのエッセイ。『村上朝日堂 はいほー!』1989/5  文化出版局 


「CAN YOU SPEAK ENGLISH?」P150-157
アメリカ文学の翻訳家でもある村上春樹さんが昨今の英会話習得ブームに対する違和感を率直に語ってみた、という実際的な内容です。書かれたのはバブル期なわけですが、その指摘は今日の私たちにも痛烈に刺さります。今なお英語習得のニーズは高まっているなかで、当時の村上さんの問題意識も説得力を増し続けている気がします。夫婦で注目したのはまずそこでした。
妻いわく、これだけ強い調子で意見を言う村上さんのエッセイは珍しいそうです。
では始めます。

ゆき  これっていつ書かれたんだっけ。
公司  1989年5月。えーと何歳?
ゆき  二歳。30年近く前なんだ。
公司  あぁ俺は四歳だ。
ゆき  これ書かれたときの、時代背景というか社会状況は、今と違うんだろうなーとは思うの。その頃に比べれば英会話の必要性は上がっているんじゃないかな。英語習いたがってる人は実際に増えてるし。わたし大学の仕事してるけど、グローバルグローバルって、職場ではよく聞こえてくるし。
ゆき  だってねぇ、、お義姉さんのとこの甥っ子くんも英会話やってるし。2歳か3歳から英語始めるといいですよっていう広告もよく入ってくるしね。
公司  そういえば、しまじろう*1もオプションで英語教材を勧めてきたよね。
ゆき  ディズニー英語システムもあるよ。前に無料サンプルのDVDをもらったきりだけど。
ゆき  なんか、やんなきゃダメ感っていうのかな。英語やらないと置いてけぼりになるよ感が、一昔前より強くなってる気がする。私もたまに、やらせたほうがいいのかなぁと思っちゃうもん。今から英語やっておくと違うのかなあって思っちゃったりもした。それでも、冷静に考えればやっぱり、このエッセイに書いてあることが本質的だと思うし、、、

子供の頃の語学学習が一番必要なんだと言われればそれまでだけれど、普通の6歳の子供がどうしてバイリンガルにならなくちゃいけないのか僕には全然理解できない。日本語もちゃんとできない子供が表層的にちょこっとバイリンガルができてそこに一体何の意味があるのだろう?

何度も言うようだけれど、才能とあるいは必要があれば、子供英会話教室に通わなくたって英会話は人生のどこかの段階でちゃんとできるようになる。大事なことはまず自分という人間がどういうものに興味があるのかを見定めることだろう。日本語の真の会話がそこから始まるのと同じように、英語の会話だってそこから始まる。P154

公司  まめ子(娘の仮名)が通ってるわかば幼稚園も、ネイティブの先生が来て教えますよっていうのをちょっと売りにしてたよね。
ゆき  今は保育園でも取り組むところがあるみたい。幼児教育でも小学校でも、より低年齢から英語を学ばせようっていう傾向は、この本が書かれた頃よりも加速しているんだろうな。ましてこれから2020年にオリンピックでしょう。だから余計にそういうのは強くなるんじゃないかなぁ。
公司  うんうん。
ゆき  じゃあこのエッセイって、時代背景が変わっているから説得力がなくなってるのかっていう見方も、あるいはできるのかもしれないけれど、、、
ゆき  村上春樹も去年『村上さんのところ』*2で、日本人だけが全然英語できないで置いてけぼりになるのは良くない的なことを言ってた気がする。

<つづく>

*1:娘がやっているベネッセの学習教材「こどもチャレンジ」のキャラクター

*2:該当著書P19の要約高校の英語教師「将来英語使わないから英語なんて勉強する必要ないじゃん、と言われることが度々あり返答に困ることがあります。英語が堪能な村上さんならこういう生徒にどういうアドバイスをしてあげますか。」 ▼村上「イタリアとかフランスとか、昔は英語がほとんど通じなかったんだけど、今はずいぶん通じるようになりました。世界はどんどん変わっています。日本だけが取り残されていくみたいな印象があります。もちろん英語ができりゃえらいってわけじゃないんですが、文化的に内向きになってしまうっていうのはまずいですよね。」