星のカービィ スターアライズ / 高瀬美恵

千明

娘が読書中にゲラゲラと笑っている。

なになに?どこがそんなに面白いの?とリビングで本を読んでいる娘に聞いてみたら、近くにきてここだと指をさしてページを見せてくれた。主人公のカービィと宿敵の女が出くわして、いざ戦おうという時におかしな掛け合いをするシーンだ。娘は作中のカービィたちのテンションでセリフと場面を読み上げてくれたあと、「ずんぐりピンクだって」と楽しそうに言った。

小説があるなんて知らなかった。ゲームは知っていました。星野カービィは昔から任天堂を代表する人気ソフトです。Switchの『星のカービィ スターアライズ』に夢中になってプレイしている娘を横で見ながら、ああそういえば僕も、同じ年の頃にゲームボーイで夢中でやってたんだよなぁと思った。昔のゲームボーイって、スマホが当たり前の今では想像できないくらい分厚い機体に白黒画面。30年くらい前ですね。相変わらず、元気にずんぐりピンクしてるんですね。

勉強机の棚に全巻ずらりと並んでいる。新刊が出ると祖父母からプレゼントとして届く。

おかげさまで全巻そろってます。

新しい小説が手元に届くと、待ってましたと言わんばかりに本を開いて読みはじめます。娘は学校への身支度であまり余裕のない朝も、歯磨きがおわって早く寝てほしいなって夜も、時間の許すかぎりずっと読んでいるのですぐに読み切ってしまう。読み終わっても、程なくして棚から取り出してはまた読んでいたりするので、何周しているのかよくわからない。そんな孫の様子を聞いて、横須賀のじぃじとばぁばは新刊を見つけ次第買ってくださるようになった。

僕も読んでみました。最新作のゲームタイトル『スターアライズ』をもとにして書かれた、フレンズ大冒険!編と、宇宙の大ピンチ!?編の二冊。何がそんなに面白いんだい娘よ、って気持ちを抱きながら。

「ああこれかも。娘が感じていた楽しさは」

読んでいる途中で思ったこと。娘とよく協力プレイしていたからわかる。この二冊の小説は、心理と情景の描写が少なくても、ゲームプレイの記憶が勝手に引き出されます。ゲームの体験が文章をガシガシ補完してくれるような仕掛けになっている。ストーリーの流れ、出来事の様子、見せ場の景色、スリリングな技と攻防。そういうのを綺麗に想像させてくれる。テンポよく映像が浮かんできて、あらかじめ知っているから親しみをもって楽しめる。馴染み古典落語を聞くように。

また小説を読むことでゲームプレイの記憶の方もアプデ―トされる。ゲームをクリアすべく「使っていたキャラクター」に個性と意思の可能性::解釈が吹き込まれる。コントローラーでゲームをクリアした事実が、カービィたちの物語を味わった思い出のようにも感じられる。ゲームのプレイ体験と、小説の読書体験が、影響しあって混ざりあっている。

たぶん、名作RPG『ドラゴンクエスト』にハマった人たちが、ドラクエの世界の冒険や魔法の設定を生かした少年漫画『ダイの大冒険』が楽しいって感じたあれと、似ているんだと思う。(『ロトの紋章』でもいいです)

シリーズ累計100万部突破の記念ツイートの画像。星のカービィのゲーム開発元(株)ハル研究所 公式アカウント

カービィのライトノベル、けっこう売れているみたいですよ。