千明
星野源さんが結婚する。新垣結衣さんと。
「逃げ恥」から笑顔と明るい気持ちをもらった人は日本全国にたくさんいるだろう。僕もそうで、子どもを寝かしつけたあとの夫婦の楽しみだったなぁと思い出した。ドラマのなかで演じられていた平匡とみくりの幸せそうな姿を浮かべながら、そのイメージとつい重ねて想像してしまいます。
そういえば。星野さんが新垣結衣さんについて語っていたエッセイがあった。
俳優というのは大変な職業だ。自分の思っていることでなく、人が書いたセリフを喋る。好きでもない相手を愛したり、嫌いでもない人を傷つけたり、体験したことのない職業になる。常に嘘をつき続ける。人気が出ればチヤホヤされ、注意されることはなくなる。
そして、そんな環境の中で、数が非常に少ない椅子取りゲームを、他の俳優相手に延々と繰り返さなくてはならない。
そんな精神状態で「普通」の感覚を持てる人は本当に少ない。人気が上がれば上がるほど精神は孤立し、忙しさと比例してその人のエゴはぐんぐんでかくなる。
どうしてもわがままになり、周りが見えなくなる。現場をフォローするときは「フォローしている感」がどうしても出てしまう。周りからは白い目で見られる。どんどん普通からは遠ざかっていく。
10代から活躍している彼女には、想像をはるかに超えるいろいろなことがあったはずだ。最初から今のようだったわけではおそらくないだろう。
そんな中で彼女は、仕事場での誠実さを見つけ、さらには並大抵の俳優がたどり着くことができない、「普通」というものを自分の力で手に入れたのだ。
僕は人を褒めるのが好きだ。人の素敵なところを見つけると、嘘は一つもなしで、あなたはここがすごいと伝えたくなってしまう。しかし彼女は褒められるのが苦手だと語る。
「嬉しいですけど、恥ずかしいほうが勝つので」もうやめてくださいね、そうたしなめられてしまった。
だから、ここにこっそりエッセイとして書こうと思う。どうか彼女が、クランクアップまでこの文章を読まないことを祈る。あなたは本当に素敵な、普通の女の子である。
「いのちの車窓から」新垣結衣という人
あなたは本当に素敵な、普通の女の子である。
そう締めくくられていた。手紙のように。
のちに結婚する運命の女性に贈られた言葉だったのかと思うと、ドキっとする。恋だったのか。恋になりうるものだったのか。みたいなロマンが、胸に去来して、「恋」のイントロが、脳に再生される。しまいには「夫婦を超えていけ」と口ずさんでしまいたくなって、僕は妙に納得しながら、現に口ずさんだ。
本当に素敵な男性である。
「いのちの車窓から」に綴られた星野さんのエッセイには、理解と愛があって、お二人の幸せな今が予感されていたように思えました。
どうぞ、末永く。
千明